共有物分割請求とは?
様々なトラブルの火種になりやすい共有関係を解消するための手段の一つとして、「共有物分割請求」があります。共有物分割請求には、手続や分割方法についていくつかのバリエーションがあります。
それぞれの手続・方法についての特徴をご理解いただいたうえで、ご自身の状況に合った手続・分割方法を検討する必要があります。
共有物分割請求とは?
共有物分割請求とは、共有物の共有関係を解消するため、民法256条1項本文に基づき共有者から他の共有者に対して行われる請求を意味します。
共有物を利用・改良したり、処分したりする場合には、共有者間における意思決定が必要になります(民法251条、252条本文)。
そのため、共有者間で意見が食い違った場合には、共有物を円滑に活用することができません。
そこで、他の共有者に対して共有物分割請求を行い、共有関係を解消することで、対象物の円滑な活用や金銭の獲得といった経済的利益を得ることが期待されます。
共有物分割請求の3種類の手続|協議・調停・訴訟
共有物分割請求には、「協議」「調停」「訴訟」の3種類の手続があります。
それぞれの手続の概要について見ていきましょう。
共有物分割協議
共有物分割協議では、共有者全員が共有物の分割方法について話し合います。
話し合いの形式は特に決まっていないので、適宜共有者同士が意見を交換し、それぞれの要望を調整することになります。共有物分割協議の場合、分割の方法についても、当事者である共有者の合意によって自由に決めることができます。
ただし、当事者だけでは感情的になり、話し合いがなかなかまとまらないケースも多いため、そのようなケースでは、弁護士に交渉代理を依頼するとよいでしょう。
共有物分割協議が合意に達した場合は、共有物分割に関する合意書を作成し、全共有者が調印したうえで、当該合意書に基づき共有物の分割が行われることになります。
共有物分割調停
共有物分割協議がまとまらない場合には、民事調停の手続を利用して分割方法を決定するという手段が考えられます。共有物分割調停では、裁判官と調停委員が共有者の間に入り、共有物分割の方法に関する各共有者の要望を適宜調整します。
第三者である裁判官・調停委員が交渉を仲介することにより、当事者だけで協議をする場合よりも冷静な話し合いが行われやすいというメリットがあります。
ただし、調停は、第三者である裁判官・調停委員が介在しつつも、あくまで協議により合意を目指すという手続であるため、ある程度当事者間に譲歩の余地があることが手段選択の前提となります。
あらかじめ協議や調停による解決の見込みが全くないという場合には、後述の訴訟手続を選択することが考えられます。共有者分割調停の場合も、協議の場合と同様に、共有者全員の参加が必須です。
共有者全員が、裁判所の作成する調停案に同意した場合、調停は成立となり、その内容が調停調書に記載されます。その後、調停調書に基づき共有物の分割が行われることになります。
共有物分割訴訟
共有物分割に関する話し合いが一向にまとまらない場合など「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき」(民法258条1項)には、共有物分割訴訟を提起することが考えられます。
共有物分割訴訟では、希望する分割方法の妥当性を、証拠を用いて説得的に立証しなければなりません。非常に専門的な手続となるので、訴訟を数多く取り扱う弁護士に相談しながら手続を進めることをお勧めいたします。共有物分割訴訟には共有者全員が参加する必要があり、全員が原告・被告のいずれかの立場で参加することになります。
また、共有物分割訴訟を提起する際には、必ずしもその前に調停を申し立てている必要はなく、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき」(協議不調、協議不能など)の形式的要件に該当すれば、訴訟を提起することができます。
最終的には、裁判所によって共有物の分割方法に関する判決が提示されます。判決が確定すれば、確定判決の内容に基づき共有物の分割が行われることになります。
なお、共有物分割訴訟の途中で裁判所から和解勧告が行われるケースもあり、和解案に共有者全員が同意した場合には、合意内容が和解調書としてまとめられ、判決を経ることなく、和解調書に基づき共有物が分割されることになります。
共有物分割の3種類の方法|現物分割・代償分割・換価分割
協議・調停・訴訟(または和解)のいずれの場合にも、共有物の分割方法としては、「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つの方法のいずれかが選択されます。
それぞれの方法の概要は、以下のとおりです。
①現物分割
共有物を分割し、分割された物をそれぞれの単独所有とする分割方法です。
②代償分割
共有者のうち誰かが共有物を単独で取得し、その見返りとして、その他の共有者に対して金銭を支払う分割方法です。
③換価分割
共有物を売却し、その代金を共有者間で分け合う分割方法です。
現物分割・代償分割・換価分割の詳細は別の記事で解説しているので、併せてご参照ください。
共有物不分割特約に注意
共有物分割請求は、原則として、共有者がいつでも他の共有者に対して行うことができます(民法256条1項本文)。
ただし例外として、共有者間で共有物不分割特約が締結されている場合には、共有物分割請求が認められないので注意が必要です(同項但し書)。
共有物不分割特約の有効期間は最大5年ですが、共有者全員の合意によって5年を超えない期間で更新が認められます(同条2項)。共有物分割請求を行う際には、共有物不分割特約が存在しないかを事前に確認しましょう。
共有物分割請求をご検討中の方は弁護士にご相談ください
共有物分割請求は、分割方法の選択や手続の遂行に関して、専門的かつ複雑な対応・検討が必要となる場合があります。
また、協議によって共有物分割の方法を決定する際には、当事者だけでは話し合いがヒートアップしてしまい、なかなか合意に至らないということも懸念されます。
そのため、共有物分割請求を行う際には、事前に弁護士にご相談ください。弁護士は、共有物分割請求に関する手続を代行して、依頼者様のご負担を軽減いたします。
また、具体的な状況に合わせて、共有者全員が納得できるような共有物の分割方法を、依頼者様とご一緒に模索いたします。共有物分割請求をご検討中の方は、ぜひ一度弁護士までご相談ください。