共有物件に発生している収益を分配してもらえない場合の対処法

弁護士 高田 佳匡 (たかた よしまさ)

共有物件から生じる収益(賃料など)は、本来共有者全員で分配すべきものです。

しかし、一部の共有者が収益を独占しているようなケースもよく見受けられます。

もし共有物件の収益を他の共有者が独占している場合には、過去の分にさかのぼって賃料相当額を支払うよう請求できる可能性があります。

共有者には法定果実(=収益、賃料)を収取する権利がある

不動産の賃料など、物の使用の対価として受けるべき金銭などを「法定果実」といいます(民法89条2項)。法定果実を収取する権利があるのは、物の所有者です。共有物件の場合は、各共有者が共有持分割合に応じて法定果実を収取する権利があります。

したがって、すべての共有者には、共有物件から生じる収益・賃料につき、別段の合意がない限り、共有持分割合に応じた分配を受ける権利があるのです。

共有物件の収益を一部の共有者が独占している場合の対処法は?

共有物件を、一部の共有者が勝手に第三者に賃貸し、自分だけに賃料が振り込まれるように手配するなどして、共有物件から生じる収益を独占するケースが存在します。

この場合、他の共有者は以下の方法によって対抗することが可能です。

収益の分配を請求できる

一部の共有者が共有物件から生じる収益を独占している場合、他の共有者は、今後共有物件から生じる収益の分配を請求することができます。

前述のとおり、本来であれば、各共有者が共有持分割合に応じて、共有物件から生じる収益を受け取る権利があります。

そのため、収益分配請求権は、共有持分から生じる当然の権利といえるでしょう。

過去分の収益についても請求可能

さらに他の共有者は、収益を独占していた共有者に対して、過去に得た収益についてもさかのぼって分配を請求することができます。

一部の共有者が、本来共有持分割合に従って分配されるべき収益を独り占めしていたとすれば、その共有者の取り分を超える部分については、「不当利得」(民法703条、704条)に基づく利得返還請求または不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を行うことができる可能性があります。

なお、当該収益の独占から長期間が経過している場合、消滅時効により権利が消滅している場合があるので、ご留意いただく必要があります。

収益額がわからない場合も相場賃料を請求できる

将来分配の対象となる収益額、および不当利得または不法行為に基づき返還または賠償請求する収益額は、いずれも現実に生じる賃料額をベースとして計算するのが原則です。

しかし、不動産賃貸借契約が存在しない、預貯金口座の入出金履歴などが不明であるなどの理由により、請求者の側で実際の賃料額を把握できないケースも存在します。

この場合には、規模・立地・用途などが類似した他物件を参考とした相場賃料を基準に、分配すべき収益額を推計して請求することも可能です。

収益の分配を請求するために証明すべきこと

共有物件から生じる収益を独占している共有者が、(過去分の)収益の分配を拒否した場合には、最終的には訴訟によって収益の分配を請求する必要があります。

収益分配請求が訴訟に発展した場合に、請求者の側が一般的に立証すべき事項(不当利得返還請求権に基づく場合)は、以下のとおりです。

被告が共有物件から収益を得ていること

まずは、不当利得に該当する事実として、一部の共有者(被告)が共有物件から生じる収益を独占的に得ていることを立証する必要があります。

とはいえ、被告からの情報開示がなければ、被告側でどのような資金の流れが具体的に生じているのかを把握することは困難です。

その場合には、訴訟提起前にできる任意の手段として、たとえば、実際に共有物件を賃借して居住している人に確認してみるという方法が考えられます。

そこで「〇〇から借りている」という確認が得られれば、訴訟の場で証言してもらうことで、被告による収益の独占を立証することが可能です。

なお、賃借人から回答を拒否された場合には、不動産登記簿謄本などを示して、自らも物件の権利者(共有者)であることを明らかにし、賃借人の占有権原に疑義を呈するなどして、賃借人に情報開示に応じるよう交渉することが考えられます。

どうしても証拠が集まらない場合には、訴えの提起前における照会制度(民事訴訟法132条の2以下)や、訴訟提起後に文書提出命令の申立て(民事訴訟法223条1項)などの法的手続を利用することが適切な場合もありますので、状況に応じた適切な対応を検討すべく、弁護士にご相談ください。

実際の収益額または相場賃料額

不当利得に基づく返還請求を行う際には、不当利得の金額を明らかにしなければなりません。

実際の賃料額を立証するためには、不動産賃貸借契約書の賃料に関する規定や、預貯金の入出金履歴が有力な証拠になります。

もし実際の賃料額が不明の場合には、相場賃料に基づいて、不当利得の金額を推計的に立証することも可能です。

相場賃料の立証には、共有物件と類似した物件に関する賃貸広告や、不動産業者による賃料見積もりなどが有力な証拠となるでしょう。

共有物件に関する収益の分配請求は弁護士にお任せください

共有物件から生じる収益を独占する共有者に対して、収益の分配を請求する場合、事前に多くの調査・検討を行う必要があります。

特に最終的な訴訟手続を見据えた場合、収益を独占している事実や、不当利得の金額を立証するために、充実した証拠収集を行うことが大切です。

収益の分配を得ることにより、共有者としての権利を正しく実現するためには、弁護士による法的な観点からのサポートを受けることをお勧めいたします。

弁護士は、共有関係に関する民法上のルールを踏まえたうえで法的に正当な主張を組み立て、依頼者様の権利実現のために尽力いたします。

また、最終的に訴訟手続による対応が必要となった場合でも、弁護士にご相談いただければ安心です。

共有物件から生じる収益を独り占めする他の共有者についてお悩みの方は、ぜひお早めに弁護士にご相談ください。

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