共有物分割請求訴訟を管轄する裁判所は?

弁護士 高田 佳匡 (たかた よしまさ)

共有物分割請求訴訟は、法律上の管轄権を有する裁判所に提起する必要があります。

共有物分割請求訴訟の管轄については、主に「土地管轄」と「事物管轄」の2つの観点が問題となり、それぞれ民事訴訟法や裁判所法で詳しいルールが定められています。

実際に共有物分割請求訴訟を提起する際には、事前に正しい管轄裁判所を確認しておきましょう。

土地管轄|どの地域の裁判所に訴訟を提起するか

「土地管轄」とは、訴訟の対象となる請求の内容等に応じて、全国の裁判所がそれぞれ地域的に分担して裁判権を行使することのできる土地の区域であり、法律で定められています。

被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所

共有物分割請求訴訟を含めた訴訟全般について、「被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所」に管轄が認められています(民事訴訟法4条1項)。

被告の普通裁判籍は、以下の順序によって定まります(同条2項)。

  • ①住所地
  • ②日本国内に住所がないとき、または住所が知れないときは、居所地
  • ③日本国内に居所がないとき、または居所が知れないときは、最後の住所地

不動産の所在地を管轄する裁判所

また、共有物分割の対象が不動産である場合には、「不動産の所在地を管轄する裁判所」にも管轄が認められます(民事訴訟法5条12号)。

不動産の所在地に係る管轄権は、被告の普通裁判籍に係る管轄権と両立するので、どちらの地域にある裁判所にも共有物分割請求訴訟を提起することが可能です。

共有者全員が合意により定める裁判所

さらに、共有者全員が書面または電磁的記録による合意によって管轄裁判所を定めた場合、第一審に限り、その裁判所にも管轄が認められます(民事訴訟法11条1項、2項、3項)。

これを「合意管轄」といいます。

なお、共有者全員の合意があれば、合意した特定の管轄裁判所のみに第一審の管轄権を認める「専属的合意管轄」を定めることもできます。

ただし、専属的合意管轄裁判所が定められた場合でも、不動産の調査などを円滑に行う必要性などを考慮して、不動産の所在地を管轄する裁判所などへの移送が行われる可能性もあるので注意が必要です(同法17条)。

事物管轄|簡易裁判所か、地方裁判所か

民事訴訟における「事物管轄」とは、事件の第一審の管轄を地方裁判所と簡易裁判所に分配する定めであり、法律で定められています。

共有物分割請求訴訟における「訴額」

共有物分割請求訴訟の事物管轄は、訴訟の目的の価額(=訴額)に応じて異なります。

共有物分割請求訴訟における訴額は、以下の計算式によって求められます。

  • 建物の場合:訴額=固定資産税評価額×持分割合×1/3
  • 土地の場合:訴額=固定資産税評価額×持分割合×1/6

たとえば、固定資産税評価額が900万円の建物と、固定資産税評価額1800万円の土地を3人の共有者が均等に共有している場合、共有物分割請求訴訟の訴額は以下のとおりです。

訴額

=900万円×1/3×1/3(建物分)+1800万円×1/3×1/6(土地分)

=200万円

訴額が140万円を超える場合|地方裁判所が管轄となる

共有物分割請求訴訟の訴額が140万円を超える場合、第一審は「地方裁判所」の管轄となります(裁判所法24条1号)。

訴額140万円超の場合に、誤って簡易裁判所に共有物分割請求訴訟を提起した場合、原則として地方裁判所に訴訟が移送されます(民事訴訟法16条1項)。

訴額が140万円以下の場合|簡易裁判所・地方裁判所のどちらも可

これに対して、訴額が140万円以下の共有物分割請求訴訟は、不動産に関する訴訟であるため、簡易裁判所と地方裁判所のどちらに対しても提起することが可能です(裁判所法24条1号、33条1項1号)。

ただし、共有物分割請求訴訟の場合、簡易裁判所に訴訟を提起したとしても、後述する移送に関する取り扱いによって、地方裁判所への移送が行われる可能性が高いです。

したがって、二度手間を防ぐためにも、当初から地方裁判所に対して共有物分割請求訴訟を提起することをお勧めいたします。

簡易裁判所から地方裁判所への移送について

訴額が140万円以下で、簡易裁判所にも事物管轄が認められる場合であっても、結局、簡易裁判所から地方裁判所に訴訟が移送されるケースがあります。

共有物分割請求訴訟は、不動産に関する訴訟であるため、被告が移送の申立てを行った場合には、簡易裁判所は原則として、地方裁判所へ訴訟の全部または一部を移送しなければならないとされています(民事訴訟法19条2項本文)。

ただし、申立ての前に被告が本案についての弁論をした場合には、移送の申立ては矛盾挙動に当たりますので、例外的に移送は行われません(同項ただし書)。

また、被告から移送の申立てが行われない場合であっても、事案の性質などに鑑みて簡易裁判所が相当と認めるときは、職権で訴訟を地方裁判所に移送することが認められています(同法18条)。

共有物分割請求訴訟の場合、対象物件の現況調査が必要になるなど、書面上のやり取りだけでは完結しない複雑な審理が必要となるケースが多いです。

簡易裁判所の機能は、このような複雑な審理を行うために必ずしも十分とはいえないため、共有物分割請求訴訟の場合には、地方裁判所への移送が行われる可能性が高いといえます。

一般論として、簡易裁判所に訴訟提起する利点は、簡易かつスピーディーに問題の解決を図ることができる点にありますが、共有物分割請求訴訟の場合、事案の性質上、上述のとおり複雑な審理が必要となるケースが多いため、簡易裁判所に提起する利点が発揮される場面は少ないと思われます。

したがって、結局、簡易裁判所に訴訟提起したとしても、地方裁判所への移送が行われる可能性が高く、簡易裁判所に訴訟提起する利点が発揮される場面は少ないと思われることから、当初から地方裁判所に共有物分割請求訴訟を提起するほうが良い場合が多いでしょう。

共有物分割請求訴訟を提起する場合は弁護士にご相談ください

共有物分割請求訴訟の管轄に関するルールは複雑ですが、弁護士に確認しながら対応すれば、管轄についてのミスを防ぐことができます。

また、弁護士に依頼することによって、共有物分割請求訴訟におけるポイントを押さえた主張・立証を展開できます。

さらに訴訟準備や訴訟期日当日の対応も弁護士に任せることができるので、依頼者の負担は大きく軽減されます。

このように、これから共有物分割請求訴訟を提起しようとする方については、弁護士がサポートできることが多いので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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