不動産業者に共有持分の売却・買い取りを持ちかけられた場合の対処法

弁護士 高田 佳匡 (たかた よしまさ)

不動産の共有持分を有している場合、不動産業者から共有持分を売却するよう要求されたり、逆に不動産業者が有する共有持分を買い取るように持ち掛けられたりするケースがあります。

不動産業者の言いなりになって共有持分を売却したり、買い取ったりすると、結果的に大きな損失を被ってしまう可能性もあるため、慎重に検討することが大切です。

不動産業者が共有持分の売却・買い取りを持ちかける経緯

不動産業者が共有持分の売却や買い取りを持ちかける場合、不動産業者には様々な意図があり得ますが、主に想定されるパターンは以下のとおりです。

【パターン1】他の共有者から共有持分を取得した

まず、他の共有者から共有持分を取得し、その共有持分を効果的に活用して利益を得ようとしているケースが考えられます。

不動産業者が共有持分を取得するルートは、共有者本人との相対交渉で購入する場合(任意売却)と、競売手続を通じて購入する場合の2つがあります。

不動産業者が一部の共有持分を取得した場合、その後の不動産業者の意図としては、さらに以下の2つのパターンが考えられます。

【パターン1-1】取得した共有持分を高値で売り抜けようと考えている

不動産業者が共有持分の買い取りを持ちかけてきた場合、他の共有者から取得した共有持分の転売によって「利ざや」を稼ごうとする意図を有している可能性があります。

この場合、不動産業者は、共有持分の取得費に利ざやを乗せた金額を提示してくるため、買い取り金額が相場よりも高額になる可能性があるので注意が必要です。

【パターン1-2】残りの共有持分を安く買い叩こうと考えている

逆に、不動産業者が共有持分を売り渡すように求めてきた場合、共有物件全体を取得したうえで開発・運用を行おうとする意図を有していることが推測されます。

このようなケースでは、不動産業者は開発取得費を抑えるため、相場よりも低い売却価格を提示してくる可能性が高いので、やはり注意しなければなりません。

【パターン2】共有持分を安く買い取り、他の共有者に高値で売却したい

不動産業者がすでに他の共有持分の一部を取得しているケース以外に、これから共有持分を取得して、他の共有者に転売しようとしているパターンが考えられます。

この場合にも、不動産業者は共有持分をできるだけ安く買い取ろうとしますが、まだ取得費をかけていない分、価格交渉についての融通が利きやすい面があります。

不動産業者から売却・買い取りの提案を受けた場合の対処法は?

不動産業者から共有持分の売却や買い取りを持ちかけられた場合、不動産業者の言いなりになって取引に応じる前に、本当に取引に応じていいかどうかよくご検討いただくことが大切です。

具体的には、以下の点に留意したご対応を心がけましょう。

売却条件が適正かどうかを相場に照らして検討する

不動産業者は、不動産に関する相場を熟知したうえで、より大きな利益を出すために、不動産業者にとってかなり有利な条件で取引価格を提示してくる傾向にあります。

もし不動産業者から共有持分の売却・買い取り価格を提示された場合には、その価格が相場に照らして適正かどうか、きちんと情報収集をしたうえで検討・判断することが大切です。

ただし、共有持分は不動産現物とは異なり、一般的な不動産取引市場に出回りにくいため、ご自身で調べるだけでは適正な相場価格を把握することが難しい場合があります。

そのため、弁護士を通じて信頼できる不動産業者からの見積もりを取得することが有効です。

なお、不動産業者から共有持分を売り渡すように求められたケースで、共有持分を手放してもいいと判断した場合には、より好条件での売却を目指すために、別の売却先を探して相見積もりをとることも考えられます。

他の共有者とも情報共有のうえで対応する

不動産業者から共有持分の売却や買い取りの勧誘があった場合、他の共有者も同様の勧誘を受けている可能性が高いです。

共有者の一部が、他の共有者への相談をすることなく不動産業者の勧誘に応じてしまうと、トラブルが一層深刻化してしまうことにもなりかねません。

トラブルの深刻化を避けるためにも、不動産業者から共有持分の売却・買い取りの勧誘を受けた場合には、他の共有者と十分な情報共有を行って、共同で対応することが適切な場合があります。

共有持分の売却・買い取りについては弁護士にご相談ください

不動産業者から共有持分の売却や買い取りを求められた場合、その提案に応じるかどうかは、他の共有者との関係性や、不動産業者の提示する取引条件が適正かどうかによって判断すべきです。

不動産業者の提案に応じて共有関係を解消することには、共有から生じる紛争を防止できるなどのメリットがあります。

その一方で、不動産業者の言い分を鵜呑みにしてしまうと、不当に不利な取引条件での売却・買い取りを強いられて損失を被る事態にもなりかねません。

もし不動産業者から共有持分の売却や買い取りの勧誘を受けた場合には、弁護士へのご相談をお勧めいたします。弁護士にご相談いただければ、不動産業者の提案に応じることのメリットやデメリットをわかりやすくご説明し、売却の可否について適切にご判断いただけるようにサポートいたします。

また、提携先の不動産業者と連携のうえ、共有持分の価格相場を調査したり、他の売却先候補から見積もりを取得したりすることも可能です。

共有持分の売却・買い取りをご検討中の方、不動産業者からの提案を受けた方は、一度お早めに弁護士へご相談ください。

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