共有関係を解消する5つの方法(買い取り・売却・贈与・放棄・共有物分割請求)
共有関係にはデメリットも多く、共有者間での紛争の火種になりかねません。
そのため、共有状態としておくことに積極的なメリットがない限り、共有者同士で話し合い、早めに共有関係を解消することをお勧めいたします。
共有関係を解消する方法には、大きく分けて「買い取り」「売却」「贈与」「放棄」「共有物分割請求」の5つがあります。
ご自身や他の共有者の状況に合わせて適切な方法を選択し、そのうえで確実に共有関係を解消するために、弁護士によるリーガルチェックを受けましょう。
共有関係を解消するメリット
民法上の共有関係を解消すれば、「共有者間の紛争防止」と「共有物の円滑・迅速な活用」という2つのメリットを享受することができます。
共有者間の紛争防止
共有物の管理行為・変更行為をするには、共有者間での意思決定が必要になります(民法251条、民法第252条本文)。
そのため、共有物の利用方法や処分方法などをめぐって、共有者同士で争いが生じてしまうことも少なくありません。共有関係を解消しておけば、共有者同士の間で紛争が発生する火種がなくなるメリットがあります。
共有物の円滑・迅速な活用
共有関係を解消すると、物の利用・改良・処分などについて、共有者間で意思決定を行う必要がなくなります。その分、物に関する意思決定が円滑・迅速になり、効率よく物を活用することが可能になります。
共有関係を解消するための5つの方法|概要と注意点を解説
共有関係を解消する方法としては、大きく分けて「買い取り」「売却」「贈与」「放棄」「共有物分割請求」の5つが考えられます。
それぞれの方法について、その概要と注意点を見てみましょう。
自分が他の共有者の持分を「買い取る」
他の共有者の共有持分を自分がすべて買い取れば、共有物全体を自分の単独所有とすることができます。
ただし、買い取りには取得資金を準備しなければならず、また他の共有者が共有持分を売ってくれるとは限らない点に注意が必要です。
自分の共有持分を他の共有者に「売却する」
共有物を処分して金銭を得たいとお考えの場合には、他の共有者に対して共有持分を売却することが有効です。
他の共有者が共有持分を買い取ってくれるとは限りませんが、自分が共有関係から離脱したいというだけであれば、共有者ではない第三者に対して、共有持分を売却してしまうことも可能です。
自分の共有持分を他の共有者に「贈与する」
自分の共有持分を他の共有者に贈与することによっても、共有関係を解消することができます。家族同士で物を共有しており、対価の授受があまり意味をなさない場合には、贈与が有効な共有状態の解消手段になり得るでしょう。
ただし、無償で共有持分を贈与した場合、受贈者の側で贈与税の課税が問題になります。
特に土地や建物などの不動産の場合、共有持分の価値が高いケースが多く、高額の贈与税が課税されてしまう可能性があるので十分に注意が必要です。
自分の共有持分を「放棄する」
他の共有者が贈与に応じないとしても、共有持分を放棄すれば、その共有持分は自動的に他の共有者に帰属します(民法255条)。
しかし、放棄によって自分の共有持分が他の共有者に帰属することとなった場合、実質的には自分から他の共有者に対して、共有持分が贈与されたのと同じです。
したがって、贈与の場合と同様に、受贈者の側で贈与税の課税が問題となりますので注意しましょう。
他の共有者に対して「共有物分割請求」を行う
共有関係を解消するためには、他の共有者に対して「共有物分割請求」を行う方法も考えられます。共有物分割請求は、原則として各共有者がいつでも、他の共有者に対して行うことが認められています(民法256条1項本文)。
共有物分割請求における分割の方法としては、まず共有物を分割し、分割された物をそれぞれの単独所有とする現物分割があります。
たとえば土地の場合であれば、一筆の土地を「分筆」することで二筆以上に変更し、それぞれの筆を単独所有とすることができます。現物分割以外にも、共有者の一部が共有物を取得し、他の相続人に対して補償金を支払う「代償分割」や、共有物を売却してその代金を分ける「換価分割」の方法が選択されるケースもあります。
ただし、共有者間で共有物不分割特約が締結されている場合には、5年間の期間内で共有物分割請求が認められなくなる点に注意が必要です(同項但し書)。
なお、共有物不分割特約は5年を超えない範囲で更新も認められています(同条2項)。共有物分割請求は、協議や調停でまとまらない場合、最終的には訴訟を通じて行うことになるため、実際に他の共有者に対して共有物分割請求を行う際には、弁護士にご相談することをお勧めいたします。
共有関係についてのお悩みは弁護士にご相談ください
共有関係を解消するための方法は様々ですが、ご自身や他の共有者の経済状況・意思などを考慮して、具体的な状況下でベストな方法を選択することが大切です。
共有持分の処分や、共有物分割請求に当たっては、共有物分割協議書の締結や訴訟手続などとの関係で、弁護士のサポートを受けることをお勧めいたします。
共有関係についてのお悩みをお抱えの方は、ぜひ一度弁護士までご相談ください。